Road to Rebirth

Through life and death, a chainless soul, with courage to endure !

「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」

今年の3月に逝去された世界的音楽家坂本龍一さんが

50代後半から最晩年までの自分の人生を語った

自伝「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」を読みました。

 

www.shinchosha.co.jp

 

坂本龍一さんのことは

私が中学生だった頃に Yellow Magic Orchestra での活躍で知りました。

クラスメイトにYMOのLPレコードを借り、カセットテープにダビングして

テープが擦り切れるほど聴いていました。

その後も「戦場のメリークリスマス」や「ラストエンペラー」の映画音楽で

強烈な印象が残っています。

 

 

本を読んで改めて坂本さんが稀有な存在だったということがわかりました。

音楽を通じて世界で活躍され認知されていたことはもちろんなんですが

膨大な量の古今東西の書物や芸術に触れ、思想や文化、科学などに興味を持ち

非常に高い次元で思索を重ねてこられたようです。

晩年の積極的な社会活動は

深遠な思索から生まれた高邁な精神に支えられていたようです。

 

坂本さんが大切に読んでこられた書物については

最近「坂本図書」という本が出版され

蔵書のごく一部と坂本さんの思索の一端を覗くことができます。

 

www.sakamoto-library.com

 

自伝の冒頭

大規模な癌の手術を受けられたあと

強烈なせん妄が起こったという下りがあるのですが

せん妄に財津一郎さん(ご冥福をお祈りします)のCMが現れたそうで

不謹慎だとは思いながらも笑ってしまいました。

 

坂本さんの遺作となったアルバム「12」は

装飾がない素のままの音楽という印象を受け

その分強く心が引き込まれていきます。

最近時間があるとこの「12」をよく聴いています。

この「12」のジャケットのデザインは

坂本さんが尊敬していた芸術家 李禹煥(リ ウファン)さんのものです。

milanrecords.com

 

私が住む街の近くにある福岡アジア美術館

李さんの初期の作品が所蔵され

現在展示中とのことだったので観てきました。

 

faam.city.fukuoka.lg.jp

 

 

写真のバランスがおかしいのはお許しください。

「線より」という1977年の作品です。

 

 

自伝の最後、坂本さんの話の聞き手である鈴木正文さんの後書きでは

自分の生命が僅かしか残っていないと自覚しつつ

次世代の若い人たちに希望に満ちた世界を残すために

どう行動すべきか、それだけを考えていたようです。

涙腺が緩んで少しずつしか読めませんでした。

 

最後は次の言葉で締め括られていました。

Ars longa, vita brevis ”